人生で特に大きな不幸な出来事があったわけじゃない。
でも、なんとなく生きづらい。
なぜかいつも思考がネガティブに回ってしまう。
自分はダメな人間だなぁと思うことが多い。
そんなことはありませんか?
それは、もしかすると「スモールトラウマ」と呼ばれるものの影響かもしれません。
スモールトラウマは、事故や暴力など大きな出来事によって生じるトラウマとは異なり、日常の些細な出来事から生じるトラウマです。
多くの人が見過ごしがちですが、これが積み重なると心の健康に影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、スモールトラウマがどのように日常生活に影響を与えるのか、その対処法について解説していきます。
この記事の目次
スモールトラウマの意味
近年、翻訳された書籍に、スモールトラウマという言葉を見かけますが、一体、スモールトラウマとはなんなのでしょうか。
スモールトラウマは、直訳すると小さいトラウマ、となりますが、そのままの直訳の意味だけではなさそうです。
スモールトラウマは、スモール・t・トラウマ、英語では、small "t" trauma、もしくは little "t" trauma などと呼ばれます。
この言葉は、ラージ・T・トラウマ、英語では、large "T" trauma もしくは Big "T" trauma、との対比で出てくることが多いです。
スモールt、というのは小文字のt、ラージTというのは大文字のTのことを指します。
つまり、スモールトラウマとは小文字のtのトラウマ、という意味でもあるんです。
スモールトラウマとは
1990年代は、トラウマに対する理解が大きく進んだ時期で、特にPTSD(心的外傷後ストレス障害)に関する研究が進展しました。
その影響で、トラウマとは誰から見ても「それトラウマになるよね」というような「大きい出来事」によって生じるもの、と思われがちになりました。
しかし精神医学や心理学の分野でトラウマの影響がより詳細に探求されるようになり、日常生活の中で繰り返し経験するような小さなストレスや心理的な傷つきからも、人生に大きな影響を与えるようなトラウマが生じる可能性があるという認識が出てきました。
そこで、「大きい出来事」から生じるトラウマ(ラージ・T・トラウマ large "T" Trauma )とは区別する意味で、「スモール・t・トラウマ」small "t" trauma(以後、スモールトラウマを略します)という用語が用いられるようになったのです。
ここではスモールトラウマをわかりやすくするために、ラージ・T・トラウマと比較する形で説明したいと思います。
ラージ・T・トラウマ(large "T" trauma)
ラージ・T・トラウマは、大きな衝撃を与える出来事や状況で、個人の精神的・感情的な健康に深刻な影響を与える可能性が高いものを指します。
これらの出来事は、通常、一度きりの激しい経験で、トラウマ後ストレス障害(PTSD)などの深刻な心理的反応を引き起こすことがあります。
例:
戦争や自然災害の経験
重大な事故や負傷
性的・身体的虐待
身近な人の突然の死や重大な喪失
スモールトラウマ(small "t" trauma)
スモールトラウマ は、日常生活の中で繰り返し経験する小さなストレスや困難、あるいは軽度なトラウマ体験を指します。
これらの経験は、一つ一つは重大ではないかもしれませんが、蓄積されるとラージTトラウマと同じように長期的に心理的な問題を引き起こす可能性があります。
スモールトラウマは日常によく起こりがちなことで生じるためしばしば軽視されがちです。
辛い気持ちがあっても、過敏に反応しすぎだ、大袈裟だ、などと捉えられ、トラウマとは思われないことが多いですが、影響は無視できないものがあります。
例:
子ども時代の親から愛されていない、大切にされていないと感じる出来事
持続的ないじめやからかい、ハラスメント
小さな失敗や拒絶
軽度な事故や病気
スモールトラウマに繰り返しさらされると、ラージ "T" トラウマとなる出来事を 1 回経験するよりも、より大きな精神的損害を引き起こす可能性があるとも言われています。
スモールトラウマが日常生活に及ぼす影響
スモールトラウマは、一見些細なことから生じる心の傷であるため、日常生活にどのように影響を与えているのか気づきにくいものです。
しかし、これが蓄積されることで、次第に生活の質を低下させる原因となることがあります。
例えば、スモールトラウマを抱えていると、些細な出来事に対して過剰に反応してしまったり、人間関係において自信を失ったりすることがあります。
また、スモールトラウマは無意識のうちに心に影響を与え続けるため、ストレスや不安が蓄積され、これが慢性的な疲労感や気分の落ち込みにつながることも少なくありません。
さらに、スモールトラウマは、日常的な意思決定や行動に影響を与え、リスクを避けるような行動パターンを強化することがあります。
もう心はこれ以上、傷つきたくないと感じているからです。
結果として、挑戦を避けたり、新しいことに対して消極的になる傾向が生まれやすくなります。
これにより、変わりたいと願っても同じような日常を繰り返すことになり、人生への満足度が低下し、さらに自己評価が下がるという悪循環に陥ることもあります。
よく見られるスモールトラウマの症状
スモールトラウマの症状は、心に蓄積されることでさまざまな形で現れます。
以下に、スモールトラウマに関連する代表的な症状をいくつか紹介します。
まず、感情的な反応としては、何でもない出来事に対して過剰に反応してしまうことが挙げられます。
例えば、友人からの軽い指摘や、仕事での小さなミスに対して強いショックを受けたり、必要以上に落ち込んだりすることがあります。
これは、過去に受けた傷が心の中で影響を与え続けているからです。
身体的な症状にも関係します。
スモールトラウマは、慢性的な疲労感や頭痛、胃の不快感などの身体的な不調として現れることがあります。
これらの症状は、ストレスが体に現れる典型的な例であり、原因がわからないまま続くことが多いです。
さらに、スモールトラウマは、人間関係にも影響を与えることがあります。
例えば、他人と接するのが怖くなったり、信頼するのが難しくなったりすることがあります。
仲が良い友人にも本当の本音は話せない、などもスモールトラウマの影響と考えられます。
これらの症状は、個々には小さく見えるかもしれませんが、放置すると心身の健康に大きな影響を与える可能性があり、人生の質に関わる問題にもなってきます。
特に子ども時代に蓄積されたスモールトラウマに注意
子ども時代に蓄積されたスモールトラウマは、成人後のメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼすことがあるため、特に注意が必要です。
子どもは感情や経験をうまく言葉に表現できないことが多く、周囲の大人がそのサインに気づかず、無視されてしまったり、悪い子だとレッテルを貼られて否定されてしまうことがよくあります。
また、親自身がスモールトラウマの影響を受けている場合、イライラして感情的になったりなど子育てに心の余裕がなくなり、子どものありのままを認める、ということが非常に難しくなります。
一見些細に思える衝突でも、子どもの心は大人が想像する以上に傷ついている上、回復の間もなく同じような衝突が繰り返されると、子どもの心の傷はスモールトラウマとして心の奥深くに蓄積されます。
すると将来にわたって心理的な問題を引き起こすリスクが高まります。
そして自己評価の低下や対人関係の不安、さらには学業への意欲の低下などの形で現れることがあります。
また、無意識のうちに「自分は価値がない」「他人から理解されない」といった否定的な思い込みが形成されることはよくあります。
子どもが親を困らせるような問題行動をとる裏側には、スモールトラウマの蓄積があることがほとんどです。
大人になってからの心の健康に影響を与えるリスクを減らすためには、子ども時代におけるスモールトラウマを早期に発見し、適切に対処することが重要です。
そのためには親は子ども自身が安心して話せる環境を整えることが不可欠です。
また、親にありのままを認められた経験が少なかった人で、生きづらさなどを抱えている人は、スモールトラウマの蓄積があると思ってもらって良いでしょう。
スモールトラウマに気づくためのセルフチェック法
スモールトラウマは、些細な出来事から生じる心の傷であるため、気づかずに放置してしまうことが多いです。
しかし、これが積み重なると、心身に大きな影響を与える可能性があるため、早めに気づくことが大切です。
✅ 些細な出来事に対して、落ち込んだり怒りが湧いたりなど、過剰に反応していませんか?
✅ 自分自身を否定したり責めたりすることが続いていませんか?
✅ 特定の場所や人を避けるようになっていませんか?
✅ なんとなくの疲労感や身体的な不調が続いていませんか?
✅ 過去の嫌な出来事が頻繁に頭に浮かびますか?
これらの質問に「はい」と答えることが多ければ、心の中にスモールトラウマが蓄積されている可能性があります。
早めに気づいて対処することが、心の健康を守るための第一歩です。
スモールトラウマを克服するための方法
スモールトラウマを克服するには、継続的なセルフケアと、心の状態を理解するための具体的な方法を取り入れることが重要です。
以下に、スモールトラウマを克服するための方法をいくつか紹介します。
マインドフルネスの実践
マインドフルネスは、現在の瞬間に意識を集中させることで、不安やストレスを軽減する効果があります。
深呼吸をしながら、自分の感情や思考を客観的に観察する練習をすることで、心の中のトラウマに気づきやすくなり、感情のコントロールがしやすくなります。
ネガティブな思考パターンの書き換え
スモールトラウマは、繰り返されるネガティブな思考パターンを形成することがあります。
自分がどのような思考パターンに陥りやすいかを認識し、それをポジティブなものに書き換える練習を行うと良いでしょう。
例えば、「自分はダメだ」という思考を「自分にはできることがある」と意識的に変えることです。
まずは、自分の思考パターンを把握するために、日記をつけることをお勧めします。
身体を動かす
運動は、心と体の健康を保つために非常に有効です。
軽いジョギングやウォーキング、ストレッチなどの身体を動かす活動を日常に取り入れることで、ストレスが軽減され、心がリフレッシュされます。
運動後の爽快感が、スモールトラウマの影響を和らげるのに役立ちます。
専門家のサポートを受ける
スモールトラウマを自分だけで克服するのが難しいと感じた場合は、心理カウンセラーやセラピストなどの専門家のサポートを受けることも考慮しましょう。
専門家は、適切な対処法や治療方法を提供してくれるため、より効果的にトラウマを乗り越えることができます。
これらの方法を組み合わせることで、スモールトラウマを少しずつ克服し、心の健康を取り戻すことが可能です。
重要なのは、自分のペースで無理なく進めることです。
専門家の助けが必要な場合のサイン
スモールトラウマに対してセルフケアを実践することは重要ですが、時には専門家の助けが必要な場合もあります。
以下に、専門家のサポートを受けるべきサインをいくつか紹介します。
長期間にわたる不安や憂鬱感
日常的に不安や憂鬱な気分が続き、数週間以上改善しない場合は、心の奥深くにスモールトラウマが根付いている可能性があります。
このような場合、心理カウンセラーやセラピストに相談することを検討すべきです。
日常生活に支障をきたす
スモールトラウマが原因で、仕事や家事、対人関係、子育てなどに支障が出ている場合は、専門家の助けを受けるタイミングです。
例えば、感情の爆発、集中力の低下や決断力の喪失、人と会うことに対する強い抵抗感が出ている場合、早めの対処が求められます。
特に子育て中の方は、早めの対処で、子どものスモールトラウマになるような出来事を減らしていくことができます。
身体的な不調が続く
慢性的な疲労感や頭痛、胃の不調などの身体的な症状が、ストレスやトラウマによるものであると感じた場合も、専門家の助けが必要です。
これらの症状は、心の健康が影響を受けているサインであり、無視すると悪化する可能性があります。
過去のトラウマが頻繁に頭をよぎる
スモールトラウマに関連する出来事が頻繁に思い出され、そのたびに強い不安や恐怖を感じる場合、専門的なサポートが必要です。
過去の経験が現在の生活に影響を与えていると感じたら、専門家に相談することが大切です。
セルフケアが効果を感じられない
これまでに試したセルフケアが効果を感じられず、むしろ悪化していると感じる場合は、専門家に相談する時期です。
自己判断で無理をせず、プロのサポートを受けることで、より効果的にスモールトラウマを乗り越えることができます。
これらのサインに気づいたら、早めに専門家の助けを求めることが、スモールトラウマからの回復を早める鍵となります。
心の健康は一人で抱え込まず、適切なサポートを得ることで改善していくものです。
まとめ
スモールトラウマは、日常生活の中で無意識に蓄積される心の傷です。
しかし、早期に気づき、適切な対処をすることで、その影響を軽減し、心の健康を守ることができます。
この記事を参考に、心のケアを意識した生活を心がけてみてください。
また自分自身の健康を守るために、必要なサポートを得ることをためらわずに行いましょう。
私は2009年より、インナーチャイルドを子ども時代に蓄積したスモールトラウマとして扱い、セッションを提供してきました。
トラウマに関する無料相談は随時行っていますので、こちらのページからスケジュールを確認し、お気軽にお申し込みください。
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